網入りガラスは割れないガラスではない!多く使われている理由は?
頑丈なガラスを希望する際、多くの方が網入りガラスを選択しがちです。でも、この選択には大きな問題があります。
網入りガラスを割れないガラスと勘違いされる方が多いのですが、実は、網入りガラスは割れないガラスではありません。
強い衝撃が加えられると、普通のガラスと同様に、網入りガラスも割れてしまいます。また、条件によっては普通のガラスよりも割れやすい場合すらあります。
ここでは網入りガラスの特徴について説明し、防犯性や安全性のためにはどのようなガラスを選択すべきか、紹介させて頂きます。
目次
網入りガラスの特徴
①網入りガラスは衝撃で割れる
網入りガラスはガラス内部に金属製のワイヤーが埋め込まれているガラスです。網入りガラスを詳しく見てみると、頑丈なワイヤーが内部に通っているため、とても頑丈そうなガラスに見えます。
でも、実際にハンマーで叩いて衝撃を加えると、標準的なフロートガラスと同じようにガラスは砕け散ります。
これは、衝撃を加えられた部分が普通のガラスと変わらない構造をしているからです。さらに、ワイヤーが埋め込まれているのはガラス全体の数%に過ぎず、ワイヤーがガラス表面を覆っているわけでもありません。
網入りガラスでも、衝撃が加わるのはガラス本体なので、衝撃が加えられたら当然割れてしまうのです。
さらに、内部に埋め込まれているワイヤーも標準的な金属製なので、ニッパーや金属用カッターのような工具を用いれば簡単に切断できます。
網入りガラスは意図的に破ろうと思えば、簡単に破れてしまうのです。高い防犯性能を有しているわけではないので、注意が必要です
②網入りガラスは防火用ガラス
網入りガラスの強度は通常のガラスと変わりません。では、なぜ網入りガラスが設置されているのか、疑問に抱かれる方も多いはずです。
網入りガラスは、防火用に作られています。実際、網入りガラスは防火ガラスと呼ばれる事もあり、ガソリンスタンドのような火災の危険性が高い建物には、法令によって設置が義務付けられているのです。
ガラスはもともと熱に弱く、火災が発生すると割れやすい性質を持っています。
通常、建物で火災が発生すると、建物内部の部屋で火事が広がります。家具やカーペット、カーテンのような可燃物が燃え、部屋の内部は高温に達します。一方、建物の外側の外気は低いままです。
この時、ガラスの内側は火災の熱によって急激に膨張し、風船が膨らむように、広がろうとします。一方で、外気に晒されているガラスの外側部分の温度は低いので、膨張しません。
この内側と外側の膨張差が大きくなると、ガラスは風船が破裂するように、粉々に砕け散ります。
こうしてガラスが熱によって破裂すると、ガラスの破片が猛烈な勢いで周囲に飛散します。この砕け散ったガラス破片が人体に降り注ぐと、極めて危険な状態となります。また、ガラスが粉々に砕け散ると、火災がより激しく広がる危険性が生じます。
このような時、網入りガラスが設置されていれば、火災の影響を軽減できます。
ガラス内部に埋め込まれたワイヤーにより、ガラスが膨張しても、ワイヤーがネットのような役目を果たしてガラスが飛散するのを防げるのです。
そして、ガラスが飛散しなければ、炎が窓の外に吹き出すのも防げ、火災の延焼を抑制できます。
網入りガラスは火事の際にガラスが破裂、飛散するのを防ぐために設置されているのです。
基本的に網入りガラスは火災が発生しやすい場所に設置される、火災防止用ガラスと覚えておきましょう。
③網入りガラスも熱割れする
ガラスは物質の中では高い耐久度を持ち、安定した形状を保つ性質をしています。ただ、ガラスも他の物質と同様、経年劣化によって損傷していきます。
網入りガラスは経年劣化によって、熱割れする場合があるため、注意が必要です。
ガラスは日光に晒される部分と、サッシに覆われている部分に分けられます。ここで、直射日光に晒される部分は放射熱を吸収し、その熱によってガラスは膨張します。一方、サッシに覆われた部分は放射熱を吸収しないため、膨張しません。
この膨張差によってガラス内部に歪みが生じると、物理的な衝撃を加えていなくてもガラスは自然に割れてしまう場合があります。
この放射熱の影響で自然とガラスが割れてしまう現象を熱割れと呼びますが、この熱割れは網入りガラスでも発生します。ワイヤーが入っていても、ガラスの熱による膨張を防げないからです。
網入りガラスでも、他のガラスと同様に熱割れは発生してしまうため、注意が必要です。
④網入りガラスは錆び割れしやすい
熱割れとは別に、網入りガラスには特有の問題があります。錆び割れという現象が発生しやすいのです。
錆び割れとは、ガラス内部に埋め込まれた鉄のワイヤーが錆びてしまう事で、ガラスが割れてしまう現象です。
網入りガラスに入れられているワイヤーには、防錆処理が施されています。ただ、この防錆効果が経年劣化によって衰える場合があります。そして、ガラス周囲を囲う合成樹脂によるパッキングも、年月と共に劣化していきます。
そうすると、サッシ部分から漏れた水がガラス内部のワイヤーに張り込み、ワイヤーが錆びてしまいます。ワイヤーが錆びるとガラス内部でワイヤーが膨張し、ガラスに亀裂をもたらします。
こうして錆び割れは発生するのです。
この錆び割れは、網入りガラスに特有の現象で、他のタイプのガラスには発生しない現象です。
熱割れと同様に経年劣化で錆び割れする可能性もあるので、網入りガラスの使用時には注意が必要です。
網入りガラスの交換、撤去における注意点
①網入りガラスの交換は要注意
網入りガラスはガラス全面にワイヤーが埋め込まれているため見栄えが良くなく、風景を楽しむ際の支障にもなります。
そこで、設置されている網入りガラスを撤去し、ノーマルなフロートガラスの設置を検討する事も想定されます。
でも、網入りガラスの交換には注意が必要です。入居した建物に網入りガラスが設置されている場合、その網入りガラスが法令に基づいて設置されている可能性が高いからです。
法令に基づいて設置されている網入りガラスを勝手に撤去し、普通のガラスに交換してしまうと、法律違反となってしまいます。その状態で仮に火災が発生し、重大な損害が発生したら、膨大な損害賠償責任を追及されてしまいます。
網入りガラスの撤去や交換は慎重に行わなければなりません。
②ワイヤー無しの防火ガラスも選択できる
防火窓の設置が義務付けられている場合、網入りガラスを用いるのが一般的な選択です。ただ、現在では網入りガラス以外にも透明な防火ガラスも開発されており、そちらを網入りガラスの代わりに用いることもできます。
現在、ワイヤーが入っていない耐熱強化複層ガラスが開発されています。防火設備として国土交通大臣から認定されており、網入りガラスと同じように防火窓の設置が義務付けられている場所に設置できます。
この耐熱強化複層ガラスはワイヤーが入っていないため、普通のガラスと同じような視野が確保されます。また、ワイヤーがない分、網入りガラスよりも軽量で、窓の開け締めがしやすくなっています。
ただ、特別な技術を用いて作られているガラスなので、網入りガラスよりも高額です。頻繁に使用する窓など、使用ニーズに応じて導入を検討すると良いでしょう。
網入りガラスの防犯性能
①網入りガラスの防犯性における限界
一般の方の多くが高い防犯性を求めて網入りガラスを設置しています。この選択は決して誤りではないものの、防犯面を考慮すると、網入りガラスよりももっと安全性の高いガラスもあります。
前述したとおり、網入りガラスはハンマーで衝撃を加えると割れます。ただ、通常のガラスのようにガラスの破片が飛散せず、小さな穴が開くに留まります。そして、内部のワイヤーはそのまま残ります。そこで、窃盗犯が内部に侵入するには、工具を用いてワイヤーを切らなければなりません。
このワイヤーを切るためには5分から10分程度の時間が必要となるため、通常のガラスに比べれば、網入りガラスには一定の防犯効果が見込まれます。
ただし、それでも10分以上の時間があればワイヤーを工具で切れてしまうため、窃盗犯の内部への侵入を許してしまいます。
窃盗犯は5分以上の時間を要する場合、侵入を諦める場合が多いというデータもあります。そこで、網入りガラスの防犯性については一定の効果が見込まれます。ただし、工具さえ準備しておけばワイヤーを切るのは簡単なので、網入りガラスの防犯性能には限界があるのです。
②防犯性が高い防災安全複層ガラス
網入りガラスより防犯性の高いガラスを求めるなら、防災安全複層ガラスがおすすめです。
これは、地震や台風、火災の被害から家屋や人体を守るために開発された特別なガラスで、複層ガラスの間に耐久性の高い特殊な樹脂中間膜が入れられています。
この樹脂中間膜のあるおかげで、ハンマーなどで衝撃を加えても、ガラスにヒビ割れが走るだけでガラスが砕け散る事がありません。また、穴も開きづらいため、こじ破りなどの犯罪にも対抗でき、窃盗犯の侵入阻止に大きな効果が見込めます。
さらに、防災安全複層ガラスは、その名の通り、台風や暴風雨時の飛来物にも効果を発揮します。飛来物の衝撃を受けても、通常のガラスのように砕け散る事がないため、災害時にも安心できます。
網入りガラスの破片が飛散しづらいという特徴をより強めたものが、防災安全複層ガラスなのです。頑丈で壊れにくいガラスをお求めの方に、防災安全複層ガラスは最適です。
③シャッターの設置も効果的
ガラスは金属ではないため衝撃に弱いという弱点があります。どのようなガラスであっても、強い衝撃を加えられればやがて壊れてしまいます。
この点において、万全を期すのであればシャッターの設置を検討すべきです。
シャッターを窓ガラスの外側に設置しておき、夜間や暴風時にシャッターを閉じてしまえば、その内側のガラスを守れます。
ガラスは衝撃に弱い物質なので、ガラスそのものを別の手段で守ってしまえば万全です。
耐久性の高いガラスを設置するよりも、シャッターを設置すればより効果的に窓や住居を守れます。
防災や防犯の面で心配なら、シャッターの設置も検討しましょう。
複層ガラスに網入りガラスを使うメリット
①網入りガラスは複層ガラスに使える
複層ガラスは2枚のガラスを並行に並べた形状のガラスです。複層ガラスは断熱性や遮音性に優れており、設置すれば光熱費の軽減を図れたり、騒音を抑制する事が可能です。
この複層ガラスは通常、普通のフロートガラス2枚を用いて作られます。ただ、特別に希望すれば網入りガラスを用いて複層ガラスにできる場合もあります。
網入りガラスを複層ガラスに用いる場合、外側のガラスを網入りガラスにする場合が一般的です。
このように複層ガラスに網入りガラスを用いれば、複層ガラスと網入りガラス双方のメリットを活かせます。
断熱性や遮音性を高めつつも、防災や防火に強いガラスにする事ができます。また、防犯性についても、一定の抑止効果を期待できます。
②合わせガラスとの比較も重要
網入りガラスを複層ガラスに用いれば、断熱性や遮音性に優れ、防災性の機能もあるガラスとなります。ただ、それでも網入りガラスの耐久性は合わせガラスに比べると劣ります。
合わせガラスは2枚のガラスを特殊なフィルムで挟み込む形で作っているため耐久性が高く、衝撃にも強くなっています。実際、合わせガラスは自動車のフロントガラスに使用されており、強いガラスを求める方にとり最適な選択です。
また、合わせガラスは通常のガラスを2枚合わせにしているために、一定の断熱効果や遮音性も有しています。
ただ、合わせガラスの断熱効果や遮音性は、複層ガラスに比べると劣ります。
網入りガラスを用いた複層ガラスと合わせガラスを比較すると、それぞれにメリットやデメリットがあるのです。
断熱性よりも耐久性を重視するなら合わせガラスを、耐久性よりも断熱性や遮音性を重視するなら網入りガラスを用いた複合ガラスを選択すると良いでしょう。
網入りガラスは防火用と認識する
これまで説明してきた通り、網入りガラスは決して割れないガラスではありません。ハンマーで強く衝撃を加えれば通常のガラスと同様に割れます。そして、熱割れや錆び割れにより自然に割れる恐れもあります。
ただ、網入りガラスは内部に埋め込まれたワイヤーのおかげで、ガラスが割れる際にガラス片が飛散するのを防げます。
そこで、網入りガラスは本来、防火用に用いられるものです。ただ、ワイヤーがあるので、防犯性にも一定の効果があります。
ただ、合わせガラスのほうが網入りガラスよりも頑丈なので、防犯や防災目的であれば合わせガラスを選択した方が良い場合もあります。
使用する建物や住居の用途に合わせ、様々なガラスの中から最適なものを選択するよう心がけましょう。